2014年1月9日木曜日

カンボジア「死の弾圧」:韓国側の要請によるものと韓国大使館が発表?

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●誰のため? プノンペンで治安部隊の取り締まりを受けるデモ隊の労働者(1月3日) Pring Samrang-Reuters


ニューズウイーク 2014年1月8日(水)15時43分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2014/01/post-3146.php

カンボジア「死の弾圧」は韓国の要請か
South Korea Urged Cambodia’s Military to Crack Down

 5人の死者を出したデモ制圧作戦は、自国企業を守りたい韓国側の要請によるものと韓国大使館が発表

 カンボジアの首都プノンペンで発生した賃上げを要求する労働者たちによるデモ。治安部隊との衝突で5人が死亡するなど大きな被害が出たが、この厳しい制圧作戦は韓国が要請したものだったという疑惑が浮上している。

 ここ数カ月、カンボジアでは欧米の大手アパレルブランド向けに生産を行っている衣料品工場で働く労働者たちによるストライキが続発していた。
 彼らの要求は、最低賃金を倍にすること。
 月80ドル程度の収入では生活できないというのが彼らの言い分だ。

 だが、カンボジア政府は先週、軍を動員してデモの制圧に乗り出した。
 治安部隊は中国製の小銃や警棒、鉄パイプなどを手にデモ隊への攻撃を開始。
 5人が死亡し、数十人が負傷した。

 彼らが働く工場で生産される衣料品は欧米諸国や日本に向けて輸出されているが、大手ブランドと労働者をつなぐ仲介業者として大きな利益をあげているのは韓国企業だ。
 韓国資本の企業が賃金の安い現地の労働者を雇い、先進国向けに衣料品を大量生産している。

 2012年には、韓国はカンボジアでの事業計画に総額2億8700万ドルを投資。
 カンボジアにとっては、中国を上回る最大の投資国だ。

 そんな韓国が、労働者デモの武力鎮圧を裏で扇動したという。
 韓国大使館は、過去数週間にわたって韓国企業の利益を守るためのロビー活動が舞台裏で行われてきたことを認めている。
 その要求の中には、残忍で実戦経験も豊富なカンボジア軍をデモ取り締まりの任務に就かせることも含まれていたという。

 韓国政府とカンボジア政府の間には、金銭的な関係を超えた幅広い分野での強いつながりがある。
 韓国の元大統領がカンボジアのフン・セン首相の経済顧問を務めたこともある。

 昨年7月に行われた国民議会選挙で勝利した与党カンボジア人民党に、民主主義国家として最も早く賛辞を贈ったのも韓国だった。
 この選挙は、人権団体などから不正行為の横行が指摘されており、労働者や野党政治家による一連のデモが激しさを増した理由の1つにもなっていた。

 言い換えれば、労働者のデモで危機に陥ったのはカンボジアの「国益」でもあったということだ。
 デモが過激化して工場への攻撃が激しさを増すようになると、韓国企業の利益を守ることはカンボジア政府の利益を守ることと同義となった。

 そして今月2日、武装した軍のパラシュート部隊がデモ隊の前に現れ、僧やデモ参加者を警棒や鉄パイプで殴り始めた。
 現場となったのは、ギャップやオールド・ネイビー、アメリカンイーグル、ウォルマート向けに衣料品を生産する米韓の合弁会社Yakjinの工場前だ。

 さらに翌日、制圧作戦はますます激しさを増す。
 今度はプノンペンの別の場所で首相の護衛部隊を含む多数の兵士がデモ隊に発砲し、5人が殺害されたのだ。

 悲惨な話に聞こえるが、そう思わない人もいるようだ。

 6日に公開された韓国語での長々とした声明で韓国大使館は、カンボジア政府に「事態の深刻さを理解し、迅速に行動するよう」仕向けたのは自分たちだったと認めたのだ。
 この中で彼らは、過去2週間にわたる高官レベルでのロビー活動が、
 韓国企業の利益保護の「成功」に貢献したと胸を張っている。

 大使館の声明は、発砲事件の現場に建つ韓国企業の工場は自分たちの外交的な努力のおかげで、特別な警護態勢が取られていたとする。
 軍部隊による特別な警護態勢が取られていたのは、これらの建物だけだったというのだ。

 労働者たちのストを解決するため、韓国の当局者はストの取り締まりは本来なら任務外であるはずの要人に要請を行ったという。
 首相直属で、高い戦闘力を誇るテロ対策部隊の幹部たちだ。

 今のところ韓国大使館の言い分が正しく、カンボジア政府が彼らの要請に従って今回の制圧作戦を行ったという証拠はない。
 Yakjinの工場の管理担当者であるコン・ソクンティアは、デモ鎮圧について韓国政府と共謀などしていないし、韓国側とカンボジア軍の会合も関知していないと語った。
 カンボジア政府関係者などへの取材でも、韓国との間で話し合いがあったという事実は確認できていない。

From GlobalPost.com特約



サーチナニュース 2014-1-22 14:30
http://news.searchina.net/id/1521835

韓国人権委、海外進出した自国企業の「人権侵害」を発表

 韓国の国家人権委員会が発表した調査結果で、フィリピンやミャンマーなどに駐在する韓国企業内部で人権侵害が起きていることが明らかになったと韓国メディア・亜洲経済の中国語版が21日報じた。

 記事は、同委員会公益法センターが発表した調査報告について、この10年あまりで発表された57カ国の文献や、フィリピン、ミャンマー、ウズベキスタンなどで実施した調査によって得られた結果であると紹介した。

 そのうえで、フィリピンに駐在する韓国の電子企業では、社員に安全教育を実施せず、現場には安全設備がないうえに、長年修理されていない機材が使われるといった状況であるとした。
 また、実習期間を終えたスタッフを「再雇用」という形にして正社員化を妨げ、人件費の節約を図っているとも指摘した。

 また、ミャンマーの韓国企業は「さらにひどい」とし、一定時間以上トイレにいた者は減給といった規定があるほか、非常に劣悪な作業環境、休憩時間がなく従業員が立って作業しながら食事をとるといった状況によって1週間に3-4人が過労で倒れるとした。

 記事はさらに、報告がウズベキスタンでは児童の強制労働も行われているとする一方、韓国企業側が一貫して否定したと伝えたことも併せて紹介した。



ニューズウイーク 2014年1月31日(金)14時53分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2014/01/post-3171.php
ジェフリー・ケイン

「血の弾圧」関与疑惑を韓国政府はぬぐい切れない
Treating Garment Workers in Cambodia as Terrorists

賃上げデモをテロ活動に仕立てた噂を否定する韓国政府への批判が広がっている


●「搾取」に耐えかねて プノンペンのデモで警察に逮捕された男性 Nicolas Axelrod/Getty Images

 3週間前の出来事など、なかったかのようだ。
 カンボジアの首都プノンペン近郊のカナディア工業団地では、いつものように衣料品工場が稼働し、海外の大手アパレルブランド向けの製品を作っている。

 しかし今月3日、ここで起きた最低賃金の引き上げを求める労働者のストを、兵士が銃と鉄パイプで鎮圧。
 そのとき5人が死亡、数十人が負傷した。

 工場は操業を再開したが、波紋はいまだ消えていない。
 外国政府、特に韓国政府が水面下で武力鎮圧に関わっていた疑惑が指摘されている。
 現地の韓国大使館がカンボジア政府の「国家テロ対策委員会(NCTC)」に働き掛けを行ったというのだ。

 実際、本誌既報(1月21日号)どおり、韓国大使館は当初ウェブサイトの声明で、軍とテロ対策機関に韓国系企業の保護を求めたと認めていた(現在、声明文は削除されている)。

 その後、韓国外務省は筆者らに反論文を送り、韓国の投資家のための義務を果たしたにすぎず、武力鎮圧を求めてはいないと主張。
 さらに日本と中国の政府も「同様の要請」をしたとされていると指摘した(取材に対し、日本大使館はコメントを拒否。中国大使館の広報担当者とは連絡がついていない)。

 韓国大使館は別の声明で、韓国企業は「被害者」だと主張。
 また、当初の説明を軌道修正し、NCTCの文民メンバー(ほかの要職を2つ兼務している)と短時間話をしたが、正式な要請は行っていないと述べている。

■労働者はテロリスト?

 しかし、韓国政府の説明に納得していない人は多い。
 先週には、ソウル市庁舎前で在韓カンボジア人がデモを行い、韓国企業による工場労働者の「搾取」を非難。
 ストの武力鎮圧を厳しく批判した。

 9.11テロ後にジョージ・W・ブッシュ米大統領(当時)が「対テロ戦争」を掲げて以降、世界の指導者らは敵対勢力を弾圧する口実に「テロ対策」を用いてきた。
 カンボジアでもNCTCがフン・セン首相の敵対者ににらみを利かせてきたようだ。

 国際人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、ここ数カ月、工場労働者のデモ現場で武装したNCTC要員の姿が確認されていたという。

 「法と秩序を維持するのは警察の役目だ。
 韓国政府は警察に相談すべきだった」
と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理であるフィル・ロバートソンは言う。
 「韓国政府がこの件をテロ問題と見なし、NCTCの関与を求めたことには正当性がないと、私たちは考えている」

 カンボジアの人権擁護団体アドホックの広報担当者、ニール・ルフリンも同意見だ。
 「抗議活動を行う権利は、この国の法律で認められている。
 たとえ抗議活動が暴力に発展したとしても、テロ対策機関が関わるべき問題だとは思えない」

 韓国外務省は筆者らの質問状に対し、一連の抗議デモがテロに関係あると考えているかという問いへの回答を拒否。
 抗議した市民に武力が用いられたことを非難するか、韓国大使館が工場の安全に関する懸念を表明した後にカンボジア政府が過剰な武力を用いないように何らかの策を講じたかという点に関しても、コメントを拒んでいる。

 カンボジア外務省の広報担当のコイ・クオンは筆者らに対し、ストに関して外務省もしくはNCTCに公式の書簡が届いたとは聞いていないと回答。NCTCのメンバーであるポル・チャンビラクはコメントを拒否、テロ対策特殊部隊を率いるフン・マネット(フン・セン首相の長男)には連絡が取れていない。

From GlobalPost.com特約

[2014年1月28日号掲載]






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