2014年1月31日金曜日

「アジアの時代」は蜃気楼だったのか:結局これが「アジアの限界」なのかも

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朝鮮日報 記事入力 : 2014/01/31 07:11
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/01/31/2014013100048.html

【コラム】「アジアの時代」は蜃気楼だったのか
「21世紀はアジアの時代」、1-2年前までは世界が注目…今やそんな話は出ず
相手を「悪の勢力」になぞらえる日中対立が悪影響
「アジアの限界」という声も

  恥ずかしい告白からしなければならない。
 記者は1990年代後半の5年を、本紙ワシントン特派員として過ごした。
 そのころ、最高の韓流スターはプロ野球の朴賛浩(パク・チャンホ)と女子ゴルフのパク・セリだった。
 在米韓国人も、朴賛浩投手の一球、パク・セリ選手のワンショットに一喜一憂した。
 アジア通貨危機前後の時期でもあり、なおのこと夢中になっていたようだ。
 当時、朴賛浩投手が所属していたロサンゼルス・ドジャースには、もう一人有名なアジア出身のスター選手がいた。
 野茂英雄投手だ。
 朴選手が韓国人のメジャーリーグ(MLB)挑戦のドアを開けたとするなら、野茂投手は日本人にとっての先駆者といえる。

 野茂投手は朴投手より5歳上だったが、二人は好むと好まざるとにかかわらず、競争せざるを得ない関係だった。
 少なくとも「生粋の韓国人」記者の目には、そのように映った。
 野茂投手の不幸を手放しで喜ぶのは難しかったが、心の中では悪い気はしなかった。

 しかしこんな偏狭な発想は、在米韓国人2世の前で「無残に」打ち砕かれた。
 少なからぬ数の在米2世が、朴投手を応援し、かつ野茂投手にも拍手を送った。
 在米2世は「同じアジアの人間」を応援することの何がおかしいのか、と問い返してきた。
 実際、相当数の在米2世は他の人種よりアジア系に対して好感を持っている、という事実が分かってきた。
 幼いころから白人の友人とよく付き合い、主流社会へ仲間入りすることを望む親世代の期待とは裏腹に、在米2世はアジア系と友人になるケースの方がはるかに多かった。

 そのときの経験は、アジア各国もいずれ過去の名残から抜け出し、互いに協力しつつ競争する欧州連合(EU)のような共同体へと発展できるだろう-という希望を抱かせた。
 前世紀前半にアジア全体を殺りくと狂乱に追いやった日本の過去に関する問題も、最終的にはこの大きな流れを前にして解決するだろうと信じていた。
 しかし、当分はこの夢をしまっておかねばならないようだ。

 日本で政権を取った勢力は、日本の教科書が子どもたちに「自虐の歴史」を教えてきたといまだに強弁している。
 隣国の立場から見れば、日本は自分たちが犯した過去の罪を一度もきちんと認めて謝罪したことがない。
 日帝侵略史を「誇らしい過去」と美化した教科書を見て学んだ日本の次世代が、どうして隣国と「アジアの夢」を共につくっていけるだろうか。
 一方で韓国と中国は、こんな日本とどれほど違うといえるだろうか。

 今となっては遠い昔のことのように思えるが、ほんの1、2年前まで「アジアの時代」はもうすぐのように感じられた。
 世界の大物学者、各国の主要研究機関、メディア、政財界の人々が先を争って「21世紀はアジアの時代」と語った。
 2008年の米国発金融危機の後、アジアが世界の中心になるのは単に時間の問題、と予測する人も多かった。
 世界が「アジアの時代」を語るとき、その中心軸は韓中日3カ国が存在している北東アジアだ。
 経済規模で世界第2位の中国、第3位の日本、さらに貿易規模で世界第8位の韓国を加えると、この3カ国が世界経済に占める比重は20%を超える。
 地球上でこれほど富が集中している地域は、北米大陸と西ヨーロッパ、北東アジアの3カ所しかない。

 しかし最近になって「アジアの時代」に関する話は姿を消した。
 世界の関心は日中の対立へと移った。
 中国外務省は少し前、安倍首相が日中首脳会談を希望したのに対し
 「中国は安倍首相を歓迎しない」
と公式に発表した。
 相手国の首脳を
 「好ましからざる人物(ペルソナ・ノン・グラータ)」
だと言ったわけだ。
 それどころか各国に駐在する中日両国の大使は、公の場で相手を「悪の勢力」になぞらえている。
 こうした外交上の無礼すら自然なことと受け止められているのが、現在の北東アジアの状況だ。
 さらにひどいことに安倍首相は、世界の指導者が集まる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、今の日中関係は第1次世界大戦直前の英独関係に似ていると言った。
 アジアの時代は、単なる「蜃気楼(しんきろう)」だったようだ。

 中国と日本が現在繰り広げている外交戦争に対する世界の反応を要約すると
 「手を出さずに餅でも食べよう」
というものだ。
 英国のエコノミスト誌は
 「各国は中国・日本のどちらにもくみせず、両国が争うように出してくるはずのプレゼントに期待している。
 唯一の例外が韓国
とつづった。
 過去史をめぐる日本との対立を経験している
韓国だけが、中国側に傾いている
というわけだ。
 アジアの浮上を警戒していた西欧の立場からすると、
 中・日の対立に介入すべき理由はない。

 今年は、19世紀末にこの地で日清戦争が起こってから120年、第1次大戦から第2次大戦まで続く30年戦争が起こってから100年になる年だ。
 当時も今も、韓中日3カ国の指導者がアジアを破壊と共滅の道に引っ張り込んでいる。
 結局これが「アジアの限界」なのか、という思いがおのずと心に浮かぶ今日このごろだ。





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